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公開日
2025年5月2日
筆者:Curvegrid

EthereumのPectra(ペクトラ)アップグレードで期待されること:Blob 拡張と EIP‑7702 が示す Ethereum の未来像

Prague + Electra = Pectra。Ethereum の次期スケーリング・ロードマップの大きな一歩が間近に迫っています。

はじめに

The Merge (Proof-of-Stakeへの移行) と Cancun-Dencun  (Protodanksharding) を経て、Ethereumコア開発者は、2025年5月7日に予定されるネットワークの次のハードフォークPectraに照準を合わせています。Pectra は当初別々に計画されていた Prague (実行レイヤー) と Electra (コンセンサスレイヤー) のアップグレードを融合し、ユーザー、レイヤー 2 (L2) ロールアップ、バリデーターの三方に向けた “暮らしやすさ” をまとめて提供します。

Curvegrid では Pectra の動向を継続的に追いかけてきました。本稿では中でも主役となる Blob の強化と、日常使いのウォレットを強力にアップグレードする EIP-7702 を中心に解説します。

Pectra の概要

目的

主な変更点

ロールアップをより安価・高速に

EIP-7691 で平均 Blob 数を 3 → 6、最大を 6 → 9 へ拡大

万人向けアカウント抽象化

EIP-7702 では、外部所有アカウント (EOA) が 1 つのトランザクション内でスマートコントラクトのように機能させることができるように

UXの向上

EIP-7702によりETHの代わりにステーブルコインやERC-20(例:USDC)でガス支払いができるように

コンセンサスの健全化

ステーキング報酬の改善と細かな保守

Blob (EIP-4844) おさらい

Blob (バイナリ ラージ オブジェクト) は、2024年3月13日Cancun-Dencunのアップグレードでメインネットへ導入されました。ロールアップ専用に設計された新しい一時的なデータバケットで、特徴は以下のとおりです:

  • 1 Blob =131,072 バイト
  • オンチェーン保持期間:約 18 日(≈ 4,096 エポック)
  • calldata に比べて桁違いに安価

ローンチ以来、Blob はロールアップの手数料を4 億 2,000万米ドル以上削減しています。 (Dune Analytics、2025 年 4 月)

ETHTaipei 2025からのインサイト

ETHTaipei 2025で、Curvegridの共同創設者Jeff Wentworthは、「Ethereum のバイクに Blob のサイドカーが付いた」という比喩で、ロールアップは、バイクのメイン車両(実行レイヤー)を圧迫することなく、安価な荷台(コンセンサスレイヤー)を取得できることを説明しました。

ジェフのプレゼンテーションからの主なポイント:

  • 1) Blob は高スループット L2 データに最適
  • 2) Ethereum を中立的なモジュラー・データレイヤーとして維持
  • 3) Ethereum は決済レイヤーを超え、高効率データハイウェイへ進化中

Blob 強化:EIP‑7691

OptimismArbitrumBase など多くのロールアップがバッチデータを calldata から blob へ移行し、需要が急増しています。EIP-7691 は次の変更を導入します:

  1. 1ブロックあたりのターゲット BLOB 数:3 → 6
  2. 1 ブロックあたりの最大ブロブ数: 6 → 9
  3. EIP‑7623 により大型 calldata へ追加コストを課し、L2 に Blob への移行を促す

その結果、 スループットは向上し、 手数料はさらに低減、 完全な Danksharding へ向けた堅牢な道が整います。

「Blob は L2 独自のトランザクション空間を提供し、スケーラビリティを大幅に高めコストを約 50 分の 1 へ引き下げました」
— Vitalik Buterin, ETHTaipei 2025 基調講演

EIP‑7702:通常ウォレットを“スマート”に変える革新的機能

Pectraで最も期待されているトランザクションタイプ4を導入したEIP-7702では、通常のウォレットアドレスは単一のトランザクション内で一時的にスマートコントラクトのように動作します。

  • 移行不要のアカウント抽象化: 既存ウォレットをそのまま利用
  • 好きなトークンでガス支払い: PectraのERC-20ガス決済と組み合わせることで、USDCを送るだけで新規ユーザーが即利用可能に
  • 魔法のようなコンポーザビリティ: ウォレットは承認、スワップ、Dappコールを一括で束ね、単一のアトミック取引として完結

開発者にとってEIP-7702は、セッションキーソーシャルリカバリスポンサー付きトランザクション などを容易にし、完全なアカウント抽象化 (AA) への軽量な架け橋となります。

今後の展望

Pectra は 分散性を損なわずにスケーラビリティを高める という Ethereum の約束を改めて示します。Blob 容量の拡大とスマートな EOA の推進により、ネットワークは次世代コンシューマ向けアプリに備えた 高効率データレイヤー としての地位を強化します。

Curvegrid は Pectra のテストネット、クライアントリリース、メインネットローンチを継続的に追跡していきます。Ethereum または L2 で開発中の方は、ぜひご相談ください。

お問い合わせ: contact@curvegrid.com

参考文献

最終更新日:2025年5月2日